先生のICT活用意識を変えた、
たった1つの方法

2021年7月28日

  • 教育ICT
  • 高校コラム

はじめに

神奈川県立横浜氷取沢高等学校(以下、同校)は、近隣の高校と再編・統合によって、2020年度に開校した。新規校が目指すのは「主体的に考え、協働する中で、挑戦し続ける生徒の育成」である。ICTの活用が重要なテーマとして位置付けられ、電子黒板機能付きプロジェクターと共に、みらいスクールステーション(以下、みらスク)が導入された。みらスク導入前の課題や活用状況について本郷校長と池田先生にお話を伺った。

ICT活用のハードルは高かった

 「10分間の休憩時間では、準備が間に合いません。ICT活用のハードルは高かったです。」池田先生は、当時を振り返る。全ての教室に電子黒板やみらスクが整備される前までは、校内の1か所にまとめて保管されている機器を教室に持ち運ぶ苦労が伴うものだった。当然のことながら、毎日の授業でのICT活用は敬遠されがちになり、研究授業といった”特別な時”のみに限定されていく傾向にあったという。ICT環境は、整備だけでなく、その運用を一体で検討する必然性が生まれ、後のみらスク整備等が始まることとなった。

お話を伺った本郷校長(写真右)と池田先生(同左)

ICTの苦手意識払拭に成功

 整備後に、まず同校が取り組んだのは、先生方の”ICTは大変”という意識の払拭だった。そこで、ロングホームルームなどの共通する時間で、全クラスで共通する資料を、みらスクを使って提示してもらう取り組みを行ったそうだ。本郷校長は「みらスクは、リモコン操作なので1度でも使ってみれば、誰でもその簡単さを実感することができる。授業以外の場面で、全ての先生に使ってもらう機会を設けられたことが第一歩となった」と語る。このことによって、「これは簡単だ。便利だ。」という認識が瞬く間に広めることができたそうだ。

全ての教室で毎日活用

 教室のICT環境は、黒板の右側上部に壁掛け式の電子黒板が据え付けられている。デジタル教材を提示する際は、マグネットスクリーンを黒板に広げて利用するスタイルだ。最近、池田先生は、驚いていることがあるという。「放課後や始業前に廊下から各教室を覗くと、マグネットスクリーンが広がったままになっています。それもほぼ全ての教室で。これは、ICTの利用頻度が高いことを示しています。」

全ての教室に電子黒板とみらスクが設置されている

授業準備が効率化した

 授業でのみらスクの活用シーンを伺うと、共有サーバーに格納してある教材ファイルをリモコンで提示する用途が最も多く、教材にセットでついてくるパワーポイントなどの補助教材が便利なのだそうだ。「例えば、英語教材で音声が埋め込まれているものがあって、とても便利ですよ。しかも共有ファイルに入れておくだけで、どの先生も、どの教室からもリモコン1つで利用できる点が嬉しいです。」と池田先生は語る。  同校には、iPadを活用する先生もいる。みらスクには、iPad画面を無線で電子黒板に投影できる画面ミラーリング機能も備わっており、例えば、数学などのグラフ表示や関数などiPad内のアプリ画面を大きく提示する際に利用しているそうだ。

 「みらスクと電子黒板の組み合わせは、教材ファイルと解説の書き込みで表現が豊かになり、わかりやすい授業ができるようになりました。」と本郷校長はいう。

電子黒板とみらスクを使った授業の様子

学校行事を校内ライブ放送

 みらスクは、校内ライブ放送ができる。カメラで撮影した映像を教師の電子黒板にライブ配信する機能である。同校では、新型コロナウイルス感染症対策がきっかけで学校行事の多くの場面で活用しているそうだ。「文化祭や球技大会で利用しました。体育館の一か所に全ての生徒を集められない状況だったので、行事の様子を各教室にライブ配信して、生徒には教 室から視聴してもらいました。」と語る。本郷校長は「学校説明会でも利用しました。保護者と中学生を体育館に入れられなかったので、挨拶関係は、教室にライブ配信する形式をとりました。さらに事前に撮影しておいた説明動画をみらスクで上映するなどして、入学後のイメージをしっかりと伝えることができました。」という。

教室で校内ライブ放送を視聴

生徒も効果を実感

 同校では、ICT活用について教員・生徒に対してアンケートを取り、ICT活用の効果測定を実施しており、その結果の一部を伺った。「電子黒板を使った授業により、授業の理解度や関心意欲が高まった」と答えた生徒が約8割。「ICT活用によりプレゼンテーション能力が伸びる」と答えた生徒が約9割に達しているのだという。 池田先生は、「板書の時間が軽減され、その時間を演習問題や生徒同士で発展問題の話し合いを行うことができるようになりました。一回の授業の中で生徒に与えられる情報量が多くなりました。そのことが、アンケートの結果につながっているのだと思います。」と推察していた。

 「ICTを使うことが目的ではなく、ICTを使って如何に子どもたちが主体的に取り組むかを目指している。急に変化することは難しいので、少しずつ創意工夫しながら良い方向に向かっていかれればと思っています。」と本郷校長が今後の目指す姿について語った。

システム構成図

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