COLUMN
ICT教育とは何?予測困難な未来社会に役立つICT教育と情報活用能力を考える
2020年2月4日
- 教育ICT
はじめに
私たちは、日々の生活や仕事に大小さまざまな課題を抱えて暮らしています。そして、それらの課題や問題を解決すべく、新しいサービスや製品が企業で働く人々の努力によって創り出されています。
これから先の社会は、AIやロボット技術と人が融合し、さらに便利な世の中になっていることでしょう。将来の社会の中心は、現在様々な分野で活躍している“いまの大人たち”ではなく、“いま学校に通っている子どもたち”であることに留意しなければなりません。
前回のコラムでは、身近に感じる未来社会を取り上げ、学習指導要領の改訂の狙い、その中で学校にICT教育がなぜ必要なのか、ICT機器の整備と普及にあたっての課題や問題点を紹介しました。
おかげ様で、たくさんの方々に読んでいただいております。
<ICT教育が必要になるわけと期待される効果。その課題や問題点>
https://www.mirai-school.jp/column/1275/
今回のコラムでは、2020年1月に始動した「GIGAスクール構想/文部科学省」も踏まえて、そもそもICT教育とは何なのか。将来社会に向けて学校に求められているICT教育と子どもたちに必要な情報活用能力について、社会環境の変化を振り返りながらマーケティングの視点で考えてみたいと思います。
話題は途中途中で大きく脱線しますが、そもそもICT教育は何のために必要なのかを探るヒントになれば幸いです。
◆◆目次◆◆
・ICT教育とは何のこと?定義は明確に記されていない?!
・Society 5.0時代いよいよ到来!
・未来社会は予測不可能でも、毎日の技術の進歩は著しい
・社会環境に合わせて、売れるものが変わっていく
・時代の進展と共に、求められる人物像も変わっていく
・パソコンは便利。ICT活用は手段であって目的ではない
・何が整備されるの?GIGAスクール構想が始動
・まとめと課題
ICT教育とは何のこと?定義は明確に記されていない?!
ITは、「Information Technology」の略語で、コンピュータやインターネット、通信インフラを用いた情報技術を指します。情報技術に関わるハードウェアやシステムの制御技術なども全てITに含まれています。
ICTとは、「Information and Communication Technology」の頭文字をとった略で、日本語でいうと、情報通信技術または情報伝達技術となります。ICTは「Communication」の単語が入っていることで「情報や技術の伝達や共有」といった意味合いで使われています。
ITは技術。ICTはコミュニケーションが強調されていますが、技術そのものが明確に異なるわけではありません。
では、「ICT教育」とは一体どんな意味なのでしょうか?
「ICTを学ぶ教育」?「ICTで教育を効率化すること」?「ICTを利用する教育」?でしょうか。
実は、各省庁の資料では「教育の情報化」や「ICTの活用」「ICT環境」という言葉があっても、「ICT教育」という言葉は用いられていないようです。各メディアで解説されていることをまとめると「ICT技術を授業などに活用した教育」として使われ、この「ICT」と「教育」が組み合わさったワードとして浸透しているようです。ICTは筆箱やノート、絵の具、画用紙、辞書、電子黒板などと同様にあくまで教育現場で使えるツールであって、授業の理解を向上したり、興味・関心を引き出したりするための道具といえます。
よって、ICT教育とは単語では意外と理解しにくいですが、「パソコン教室のようにパソコンの操作方法を覚える学習」「授業でパソコンを使うこと」という限定的な用途と違って、「ICTを利用する・活用する」という、広義な意味合いを持っていることがわかります。
このホームページでも、広義な意味で「ICT教育」という言葉を用いることにします。
すでに教育現場で活用されているICT機器をいくつか挙げてみます。
・パソコン端末
・大型提示装置(プロジェクタ、デジタルテレビ、電子黒板)
・書画カメラ、実物投影機、デジタルカメラ
・プリンタ
・eラーニング、デジタル教科書、学習用ソフトウェア、校務システム
・上記を動作するためのインターネットやLAN、クラウドなどのインフラ環境
など、ICT環境の整備が進んでいます。
ここから先は、子どもたちにICT教育(ICTを活用する教育)が、なぜ必要になるのかについて、いろいろな視点で考えていきます。
Society 5.0時代いよいよ到来!
最近よく見聞きするSociety 5.0(ソサエイティ5.0)。これは日本国が目指すべき未来社会の姿として、内閣府の第5期科学技術基本計画において提唱・発表されたものです。これまでの狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」とされています。
<参考:Society 5.0とは(内閣府科学技術政策サイト)>
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html
注目したいのは期間です。1.0や2.0は数千~数百年間、3.0は百年間、4.0になるとたった30~40年間くらいで、次の5.0の社会に向かおうとしています。
これまでの情報社会(Society 4.0)では、社会での情報共有が不十分とされていて、Society 5.0で実現する社会では、次のようなことが謳われています。(参考:情報通信白書/総務省)
・IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服する
・人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服される
・社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会となる
・AI、 IoT化といったデジタル化の進展による全体最適の結果、社会課題解決や新たな価値創造をもたらす可能性が指摘されている。
さて、これから先の10年~30年後は具体的にどんな社会になっていて、そこで働く仕事環境とはどのような状況になっていくのでしょうか。さらに、その時に社会の中心を担う現在の子供たちに必要な教育とは何なのでしょうか。
Society 4.0はたった30~40年間くらいでしたが、この期間中にどのくらい技術が進歩し、社会環境が変化していったのかを見てみます。
未来社会は予測不可能でも、毎日の技術の進歩は著しい
いまから35年前にあたる1985年にSF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(Back to the Future)の第1作が公開されました。この映画のシリーズでは、1985年を起点に30年前の過去と30年先の未来の世界でストーリーが進行していくわけですが、参考になる示唆が含まれています。
1985年当時に映画製作関係者によって想像された30年先の未来(2015年 ※2020年現在の5年前)の社会が登場します。空飛ぶ車、ホバーボード(浮くスケボー)、テレビ会議システムで会話、FAXでクビを通告(メールではない)、喫茶店ではブラウン管テレビ(タッチパネルではない)で注文、ホログラフィーで映画告知、濡れても自動温風で乾くジャケットなど、ユニークな製品が描写されています。
勿論、1985年当時の映画製作技術で再現できるものが登場しているわけですが、令和の時代で具現化されているものは、テレビ会議システム、FAX、タッチパネルで注文くらいでしょうか。
とはいえ、今は1985年当時に思い描かれた未来像よりも技術の発展は数歩も先を進んでいて、未だ車は飛べないものの自動走行車の開発が進んでいます。テレビは薄くて軽くて高画質になり、通信技術の発達によりスマホが普及、パソコンはタブレット型も登場、自動で掃除するロボット、ネット注文したら翌日には納品される物流システム、コンビニにATMなど本当に便利な世の中になりました。
こうしている間にも、より高速な次世代ネットワークとして5Gも実用化されようと、たった30年の間にますます便利な生活環境がより速いスピードで実現されようとしています。
社会環境に合わせて、売れるものが変わっていく
将来は変化のスピードが速すぎて予測がとても難しいです。
そこで少し視点を変えて、過去のヒット商品を例に「なぜその製品やサービスが世の中に受け入れられたのか」を考えてみます。
下表は、日経ヒット商品番付です。平成の30年間をラグビーW杯で湧いた2019年まで15年スパンで見てみます。
近年では、通信インフラが整備され、スマホが普及していることで社会が大きく変容してきている側面が垣間見えます。
【2019年(令和元年)】
・タピオカ
「タピる」というワードが流行語大賞にノミネートされるほど、国内で大ブームとなりました。
1990年代に次いで、2次ブームが到来した背景には、タピオカそのものの味ではなく、若年層へのスマホの普及があるともいえます。
特に若い世代において、インスタ映えする被写体を探し求めている習性を汲み取り、「お洒落な店に出かけて非日常的な行動をSNSに投稿して「いいね!」をもらいたい!」という願望を満たすことに成功したといえます。
・ドラクエウォークとウーバーイーツ
これも背景にスマホの普及というインフラが整備されたことで誕生したヒットしたと見ることができます。前者は家庭用ゲーム機から持ち運び可能で無料(部分課金あり)で始められること。後者は、副業を認める企業が増えたこと、そして2019年10月の消費増税でも軽減税率が適用される、という時代背景が商品を運ぶ働き手とサービスを利用する層の拡大を後押ししたと思われます。
【2004年(平成16年)】
・冬のソナタ
2002年に韓国で放映され、日本国内では2003年にNHKが衛星放送で放送されました。
家庭用AV機器も従来のビデオカセットからDVDへの転換がアテネオリンピックの特需と共に定着し、レンタルDVD市場も2007年まで活況を迎えていました(2019年現在では、スマホ等の台頭により、この市場は半分程度まで縮小しています。参考:一般社団法人 日本映像ソフト協会)。さらに年齢人口分布で最も層の厚い当時50代後半(団塊世代)が退職を目前に控え、心の空虚感をビジュアル的に癒される韓流俳優陣とストーリーがぴったりと埋めたのがブームを後押ししたのではないでしょうか。その後も、韓流ブームは続き、韓国旅行ツアーも流行りました。
【1989年(平成元年)】
・リゲイン
当時、団塊世代は働き盛りの40歳前後で子供は10歳前後です。バブル経済の真っ只中で寝る時間を惜しんで仕事やアフターファイブに勤しんだといえます。そんな中“24時間タタカエマスカ”のキャッチコピーと共に販売されたリゲインは、“もっと仕事せねば!でも眠気や疲れが邪魔だ!”という働き手の心を見事につかんだのでしょう。過労死が社会問題として注目され、働き方改革が推進される令和時代では通用しないどころか、批判にもつながりかねません。
・ハンディカム55
当時の海外旅行ブームや子供の学校行事記録に、“パスポートサイズ”というキャッチコピーがハマって大ヒットとなりました。ビデオカメラ市場は2011年をピークに販売台数が年々減少していましたが、近年では4K対応や高倍率ズーム撮影できる高付付加価値モデルが販売数を伸ばしている(出典:全国有力家電量販店の販売実績集計)
勿論、シャンプーや歯ブラシのような日用消耗品は市場の変化を受けにくいものの、ここまで時代や社会環境が変わると売れる商品やサービスも変わっていったことを挙げてみました。
スマホの例のように、特に近年ではICTによる新たな商品やサービスの開発が、新しい需要/マーケットを創出するような循環が始まっています。グローバル化も進展し、競争社会となった今、業種を問わず企業で働いている人々もお客様に受け入れられるものを創ろうと必死です。
多くのヒット商品が登場した背景に共通しているのが、その時々の課題や問題点を発見した人が存在していることです。この課題や問題点を発見する能力は、とても役に立ちます。
仕事の会議や打ち合わせでも論点(解くべき問題)を見極められている人とそうでない人では、思考や発言内容は違っています。論点を間違えると、そこからアウトプットされる成果も大きく間違ったものになってしまうことがあります。
この問題を発見する能力は、未来が予測困難であるからこそ、今のうちからじっくり磨いていきたいスキルといえるでしょう。
みらいスクールステーションは、2008年のスクールニューディール政策によって、学校に導入されたデジタルテレビの有効活用システムとして誕生しました。
当時、「テレビが導入されたけど、殆ど活用できていない」という悩みを持つ、教員や教育委員会の方々も多く、テレビと校内LANにつなぐ専用端末「メディアボックス」の提供を開始しました。
既存のデジタルテレビと校内LANを有効活用することで、校内ライブ放送やデジタル教材の提示を実現するものです。
デジタルテレビにつなぐものは、教室ノートPCが当たり前だった当時ですが、起動の遅さや先生方にとっての扱いにくさが課題となっていて、簡単リモコン操作による教材提示は広く受け入れられました。
現在では、タブレットやパソコン端末の画面ミラーリングする機能やデジタルサイネージの機能も加わり、学校だけでなく民間施設への導入も進んでいます。
是非、みらいスクールステーションもチェックしてみてください。
<みらスクとは>
https://www.mirai-school.jp/ict-education/
時代の進展と共に、求められる人物像も変わっていく
世に出てきている新しい製品やサービスの大半は、日々の生活の中で潜在または顕在している不満や課題が背景にあって、それを問題として認識することで、解決する手段が人々の発想と努力によって創造されます。
不満や課題が一部ではなく多くの人に共通しているほど、解決手段としての提案される製品やサービスが爆発的な普及とヒットにつながる市場構造があることを見てきました。しかも、課題発見から解決策提案までのスピードが速くて、技術力(他社に真似できない製造品質や販売ノウハウ含む)が備わっている事業体が競争優位に立って販売数を伸ばしていきます。
企業活動の使命が、「社会に役立つ製品やサービスの提供の対価として売上をいただく、そして持続・発展していくために利益を得ること」だとすると、企業で働く人々には「良い製品やサービスを社会に提供すること」が求められます。
社会人が業務の中で実行している思考と行動のプロセスは、児童生徒が経験する学校教育の中でも共通する部分があります。
「与えられた課題を、教わった知識や技能を使って、解を導き出す」
一昔前は、小学校・中学校・高校を問わず、教員が黒板の板書や教材を活用して指導する(一斉授業)、児童生徒は受け身で覚える(受動的)授業スタイルで、「教材の記載内容を丸暗記してテストで良い点数をとれば評価される」といった風潮がありましたが、2020年度からの新しい学習指導要領ではニュアンスが違います。
「グローバル化や人工知能・AIなどの技術革新が急速に進み、予測困難なこれからの時代。子供たちには自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、自ら判断して行動し、よりよい社会や人生を切り拓いていく力が求められる」とされています。
「課題は与えられるものではなく、自ら見つけるもの。」に象徴されるように、子供自身の中に「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善)」を育もうとする方針です。
これは社会に出てからも同じことです。山積する課題に対して、主体性を発揮し、能動的に周囲とコミュニケーションを取りながら立ち向かっていく重要性が高まっています。
欲しい情報やデータの大半は、パソコンやスマホがあればいつでもどこでも簡単に手に入る時代です。このため、豊富な知識や情報を知っているだけでなく、それらをどう活かして付加価値をつけるか。といった意欲や姿勢を持つ人物像がますます求められるようになることでしょう。
パソコンは便利。ICT活用は手段であって目的ではない
パソコンって便利ですよね。
インターネットで調べもの、メールの送受信、資料の作成、遠隔で仕事(テレワーク)や会議参加、データ分析、プレゼンテーションなど1台で何役も用いることができます。ただ、これらは業務を効率的に進めるための手段として活用しています。
インターネットで調べた結果を参考情報として業務に活かす、相手に何かを正確に伝えるために口頭による電話ではなく記録に残るメールを使う、会社やお客様を説得しやすくするためにわかりやすい資料をつくる、といったようにパソコンを活用することは、目的ではなく仕事を円滑に進めるための身近な道具や手段として重宝されています。
文科省の新学習指導要領のポイント(情報教育・ICT活用教育関係)では、「情報活用能力を、言語能力と同様に“学習の基盤となる資質・能力”」と位置付けられています。
小学校学習指導要領解説の中で情報活用能力の定義は、「世の中の様々な事象を情報とその結び付きとして捉え、情報及び情報技術を適切かつ効果的に活用して、問題を発見・解決したり自分の考えを形成したりしていくために必要な資質・能力」とあります。
つまり、パソコンを使いこなせる能力だけではなく、子どもたちが自分で問題を発見・解決したり、それに対する自分の考え方を持ったりすることを目的に“いろいろな情報やICTといった情報技術を活用する力”ということです。インターネット上の情報だけでなく、新聞・本・インタビュー・自分の五感から情報を仕入れる力、さらには情報モラルや情報セキュリティに関する知識なども含め非常に多岐に渡った資質・能力といえるでしょう。
総則ではより具体的な記述がされています。
「情報活用能力をより具体的に捉えれば、学習活動において必要に応じてコンピュータ等の情報手段を適切に用いて情報を得たり、情報を整理・比較したり、得られた情報を分かりやすく発信・伝達したり、必要に応じて保存・共有したりといったことができる力。さらに、このような学習活動を遂行する上で必要となる情報手段の基本的な操作の習得や、プログラミング的思考・情報モラル・情報セキュリティ・統計等に関する資質・能力等も含むものである。」
このような資質・能力を言語能力と同様にということは、“日本語や英語などの言葉を読み書きできる”と同じレベルの位置づけで能力を高めていこうという方針です。
言語同様に全ての能力を身につけるには、時間がかかるため以下のように示されています。
「各学校においては,児童生徒の発達の段階を考慮し、言語能力、情報活用能力(情報モラルを含む。)、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう、各教科等の特質を生かし、教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする」
情報処理や算数、理科などの特定の教科や単元に関わらず、教科横断的という表現が手段としての情報活用を象徴しているように感じます。
小・中・高等学校別の接続のポイント(総則及び各教科等)では、以下のように示されています。
・小学校においては、文字入力など基本的な操作を習得、新たにプログラミング的思考を育成
・中学校においては、技術・家庭科(技術分野)においてプログラミング、情報セキュリティに関する内容を充実
・高等学校においては、情報科において共通必履修科目「情報Ⅰ」を新設し、全ての生徒がプログ ラミングのほか、ネットワーク(情報セキュリティを含む)やデータベースの基礎等について学習
小学生の頃に平仮名・カタカナ・漢字を学び、中学生や高校生、さらには大学でも高度な文法などを学んできたのと同じように、情報活用能力を学校教育の期間を通じて段階的・教科横断的に身につけていくことになっているわけです。その際、パソコンを必ず活用する、というわけでなく、従来のように黒板も板書もノートも当然ツールとして有効活用され、教材提示も電子黒板やプロジェクターでの投影ももちろん授業内容を理解する上で効果的なツールとなることでしょう。
何が整備されるの?GIGAスクール構想が始動
これまで文部科学省では、単年度1,805億円の地方財政措置(教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018(平成30)~2022年度))を投じて、全国の学校のインフラ整備を促してきましたが、国内全体で見ると思うように進んでいない状況にありました。学習指導要領が新しくなっても、勉強道具として便利なパソコンが子どもの手元に行き渡っていないことや、自治体ごとの整備状況に大きな格差が生じているのが問題となっています。
Society 5.0時代の人材育成に向け、2023年度までに小学校から中学校までの全クラス児童生徒1人1台のパソコン端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するため、政府が2019年補正予算案で2,318億円を計上し、2020年1月30日に参院本会議で可決され、成立しました。
調達の仕組みや標準仕様書の例も示されています。例えば、パソコンOSは、マイクロソフトのWindows・アップルのiPadOS・GoogleのChromebookなど自治体によって選べるようになっています。
タブレットPC端末だけではインターネットが利用できないなど学習面での利用に制限が出てしまうため、インターネットやクラウドサービスなどに普通教室からもアクセスできるようにするための無線LANアクセスポイント、もともと学校内のLAN回線は細くて遅い場合も多くあるため、校内LANの張り替えも補助の対象となります。さらに、パソコン端末を保管するための充電保管庫も対象となっています。
政府は、2019年12月より各都道府県・政令指定都市教育委員会の担当者を対象の説明会や、学校ICT活用フォーラムを開催するなど補助事業の周知活動を素早くかつ丁寧に進めているようです。
GIGAスクール構想は、パソコンなどのICT機器を整備して完了ではなく、やっと日本がICT教育のスタートラインに立てるきっかけです。
文科省が目指す”何を知っているか”から”何ができるようになるか”への変革の始まりです。
”パソコンできます”ではなくて、”パソコンを使って何ができるようになるか”でもあります。
※この「GIGAスクール構想」については、別のコラムで取り上げようと思います。
<参考:GIGAスクール構想の実現について/文部科学省サイト>
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm
<参考:「学校における1人1台端末環境」公式プロモーション動画/文部科学省サイト>
<参考:教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018(平成30)~2022年度)/文部科学省サイト>
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1402835.htm
まとめと課題
ここまでの話題を振り返ります。
・ICT(Information and Communication Technology)教育とは、情報通信技術を授業等で活用する教育で広義の意味を持っている
・時代の移り変わりはより速さを増していき、間もなくSociety 5.0時代に突入する
・過去のヒット商品の趨勢を見ても、どんどん売れ筋が変わってきた
・自ら課題や問題を発見して、解決策を考えられることが学校教育でも社会でも共通して求められる大切な能力
・予測困難な未来社会では、パソコンも道具として使えて、情報活用能力を発揮することが重要
・情報活用能力は、パソコンスキルではなく、あらゆる情報を収集・判断して活用できる力
・学校のパソコン端末1人1台とLAN環境の整備を補助するGIGAスクール構想が始動
このコラムでは、ICT教育とはそもそも何なのか。をきっかけとして、そもそもなぜ学校の教育現場にICTが必要になるのかを取り上げてみました。
パソコンが使えても単純作業しかできない人材を育てるのではなく、あらゆる情報手段を活用して自ら創造性を発揮していく人材を育成していくことが、ICT教育の目的の本質と捉えています。ロボットやAIでも代替できない人材たちが将来社会で活躍してくれることでしょう。
いよいよ数年間に、多くの小学校と中学校の全学年の子ども1人ひとりにパソコン端末が行き渡る算段がついてきました。
パソコン端末やLAN環境を導入したらおしまい、とはならず、ここから先にも課題がいくつもあります。
・今回、補助金の活用を申請しない自治体の学びの環境は、格差がさらに広がってしまわないか。
・補助金を申請しても、ICT機器の調達や工事は果たして工期に間に合うのか。
・ICTが導入されたあとに、ICT機器は教育の手段として現場で有効活用されるのか。
・教師や児童生徒それぞれのITリテラシーに格差が出るが、それが障害になることはないか。 など
時代は変化の待ったなしで、これからも加速度的にスピードを速めていくことでしょう。
ICT教育環境の整備推進に全ての自治体が主体となって足並みを揃えて取り組むのはとても困難が伴います。だからといって政府として何もしないよりもGIGAスクール構想のように積極的に動き出すことはとても画期的なことです。
文科省の「児童生徒1人1台コンピュータ」の実現を見据えた施策パッケージで、今後の主な検討課題として、以下の3点を明記しています。
・教師の在り方や果たすべき役割、指導体制の在り方、ICT活用指導力の向上方策(今年度中を目途に方向性)
・先端技術の活用等を踏まえた年間授業時数や標準的な授業時間等の在り方、学年を超えた学び(早急に検討)
・デジタル教科書の今後の在り方(来年(2020年)度中を目途に方向性)
みらいスクール事業では、デジタル教科書・デジタル教材配信サービス「みらいスクールプラットフォーム」、授業と校内ライブ放送に対応するICTシステム「みらいスクールステーション」、さらには新しいサービスの開発・提供を通じて、明るい未来社会の創造を支援して参ります。
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